三宅村議会・平成18年第4定例会一般質問、答弁概要
2006/12/23
平成18年12月12~22日に開催された議会発言と答弁(概要)について寺澤晴男村会議員からネットに寄せられたのでご紹介します。
6番 寺澤 晴男
- 被災住民の復旧、生活再建等に係る諸施策・制度について
- 高濃度地区の重要課題について
- 未帰島者への支援策について
- 三宅島測候所の現体制(有人観測・監視等)の維持・継続要望について
- 再質問
1.被災住民の復旧、生活再建等に係る諸施策・制度について
1)諸策・制度の適用者数。 本島の噴火災害による各世帯・個人への復旧・生活再建の支援策は正格別に大きく2つに分けられると思う。
①災害復旧と生活支援金と物資の「支給」・・・償還義務を負わない制度
②再建に係る資金の「融資」・・・償還義務を負う制度
これからの制度の中には、三宅島噴火災害適用が初めてのものもあり、今後「災害保護」へ考え方・施策の基本になると思う。」
避難直後に適用された「被災者生活再建支援法」は、阪神淡路大地震など被災者の尊い生命の犠牲を経て、平成10年11月に法制化し、その後改正され三宅島噴火災害救済・支援にも適用された。
今回の被災者支援策・制度は、今後日本のどこでも起こり得る災害地の住民の生活再建、心の拠り所になると確信します。そのためにも、当事者にとって利用し易い内容であるか否かが問われています。
これら諸策・制度は実施中のものもあり、最終集計はできないが、本年11月末現在の申請者数・受給率はどうなっているか伺います。
★答弁・替地村民課長・・・計画は平成16年度に実施した帰島意向調査をふまえて予算化した。18年11月末の各制度の申請に対すると決定(受給)率は国の引越し支援金(長期避難特例)は99.4%、居住安定支援制度100%、都の被災者生活再建支援97.4%、村の高濃度地区被災住宅劣化保全支援金100%。また高濃度地区被災住宅解体は28件の申請に対し、決定は12件。うち5件は実施済み、残り7件は18年度内に処理予定です。
2)諸策・制度の期間延長。 先の質問との関連で、これらの諸策・制度には既に適用期限の過ぎた(事業終了した)もの、19年3月までのもの、20年3月のものがある。
特に、19年3月で工事が終了する高濃度地区内の被災住宅解体・撤去事業など、工事に伴い、施工業者と廃材処理所の受け入れ、処理能力の問題もあり、想定した事業量は年度内に消化できるのか。
また、長期避難特例(引越し支援)など主なものは19年3月で終わり、居住安定支援制度(全壊、大規模半壊の解体撤去)だけが20年3月までとなっている。未帰島者で帰島の意思をもっている方々への配慮としてあとで質問しますが、生活などの実態を調査し、これらの制度の適用期間延長を関係機関に要望すべきではないかと思います。
★答弁・替地村民課長・・・これら制度のほとんどが18年度中に期間が終了するが、適用期間の延伸を要望しています。
2.高濃度地区の重要課題について
1)帰島後の健康診断受診率。 本年8月2日三宅村安全対策専門家会議委員と三宅村議会議員が懇談した。
席上、委員から ①火山活動は短期的には沈静化の傾向にあるが、中長期的には活動エネルギーは蓄積傾向にある。 ②地下水はガスのフィルターの役割をしている。 ③植生の回復もみられる ④帰島後の健康診断を実施したが受診率が低い。もっと多くの方が受診され、日頃の健康チェックを心がけて頂きたい。 などの意見や指摘があった。
議員から、「風向などの好条件時(風下でないとき)は高濃度地区内の自宅に仮(一時)宿泊させて欲しい」との要望がでた。
委員からは「居住環境基準値に達していないが、帰島後健康診断の結果を参考にしたい」と、答弁された。
今回の受診率と判定結果は高濃度地区住民にとって、極めて重要な資料であり、関心事である。各地区別の受診率がどうなっているか。また、判定結果はいつ頃受診者に通知されるか。
★答弁・替地課長・・・平成18年11月23日―27日に実施した帰島後健康診断は、現人口の32.6%が受診しました。地区別では神着33.0%、伊ヶ谷47.8%、坪田33.4%、阿古27.2%です。平成17年度は25.8%でした。
2)懇談会での意見・要望の実現。 本年10月29日に坪田自治会が「坪田高濃度地区住民懇談会」を開催し、」60余名が参加して活発な意見や要望がでた。
主な意見として、
①村営住宅の家賃免除 ②村営住宅への優先入居 ③防犯・防災体制の強化 ④高濃度地区の将来展望 ⑤土地の買い上げ ⑦家屋修理しても住めない。無駄なのか・・・など、坪田自治会長名で20項目を村長に報告しその早期実現を要望してある。
これら重要事項について、住民は真剣且つ悲痛な思いで発言していた。今年度下期(11月)の住民懇談会の意見・要望と共に早期実現を望みます。
★答弁・平野村長・・・高濃度地区の方々のご苦労とご協力に感謝します。10月29日の懇談会のご意見、ご要望(20項目)は承っており、誠意を持って対応します。「家賃はどうにかならないか」という要望も出しているが、民家を借用している方には助成制度があるが、あまり利用されていない。また、生活再建支援法の引越し支援制度は適応期限が迫っているので、P・R不足かと思うので、周知していきたい。現行制度は充分に活用していただきたい。
3)家屋解体・撤去作業。 本件については機会あるたびに質問し、提言してきた。特に対象申請物件及び所有者の実情に合わせて、条件緩和等を求めてきた。
しかし事業の趣旨・条件に合わないなどの理由で決定されず、申請期限の終了したいま、放棄状態の家屋が目立つ。
申請期限は11月末だが、本事業への総申請数・解体撤去決定数はどうなっているか。
この事業の決定後、執行(解体に着手)されていない理由は、廃材の受け入れ先のクリーンセンターだけの問題か。
また、台風や火災、シロアリなど近隣への被害が心配されるが、申請しなかったものや対象外の物件はあくまでも家主の責任として、村は対応せず放置しておくのか。適用期間の延長と合わせ条件の見直しを検討すべきだ。
★答弁・吉田地域整備課長・・・解体・撤去の申請数は28件、決定は12件、完了は5件で残り7件は19年3月中に完了予定。廃棄処理は「可燃物」は災害ゴミとして島内処理する。今年度より一部プラスチック廃材、金属類は島外搬出を計画している。クリン・センターへの持込みは考えていないので支障はない。廃材の島外搬出期間は解体作業の進捗を見ながら実施していきたい。申請条件の緩和については個人財産なので所有者の特定については公費で対応できないので、これらに係る条件の緩和は考えていない。
4)ガケ復旧工事。 本年8月8-9日の台風7号で三池周辺の崖は数十ヶ所が崩落し、坪田自治会長などにご協力を頂いて現場を視察し、同17日付で村長に復旧に係る要望書を提出した。早速、所管局に要望。都道沿いなど緊急を要する場所については、即対応するとの回答を得ているが、当面は都道沿いに土壌袋とコンクリートブロックを並べるだけの応急処置か。
全面復旧工事は19年度からとのことだが、他の崩落場所では泥水が民家に流入し、家屋の劣化を早めている。今後集中豪雨による大量の浸水が心配だ。早急に対処するよう重ねて要望して頂きたい。
★答弁・山上安全対策担当主幹・・・台風7号による三池ガケの工事の見通しについて、三宅支局に確認したところ、緊急対策が必要なところについては予算要求している。都道沿いの崩落箇所については来年(19年)2月に着手し年度内に完成させるとのこと。高潮対策は、離岸堤(潜堤)4基の設置を計画しているが、本年度は1基を設置するためのブロックを製作し来年度に据付を予定している。
3.未帰島者への支援策について
1)実態調査計画。 本件については、3月の第1定例会でも質問し、村は「検討する」と答弁している。
帰島の希望を持ちながら健康や仕事などの都合で、まだ帰れない多くの住民がいる。この方々は、かつてのふるさと三宅島の発展や地域振興に力を尽くされた方々だ。それぞれの事情で一緒に帰島できず、その多くは居住地に登録し、そこの町民・区民・市民・県民であり、法律上、いまは三宅島島民ではないだろうが、三宅島で育ち、仕事し、貴重な財産を三宅島に残しており、「私たちのふるさとは三宅島だ。必ず帰るんだ」と帰島の意思・希望を持ち続けていることを忘れてはならない。
三宅村(行政)が島民でない方々の生活実態調査することは抵抗感もあろうが、自然災害及び社会的要因で不在家主・地主が増えれば三宅村としても、当該地域の再生・発展に大きなリスク負うことになる。
民間組織では詳細な調査が進行中だ。行政としてその方々の実態を把握し、一日も早い帰島など将来への展望と望みを失わせないで欲しい。今後も心を通じ、血の通い合う対応をすべきだ。
これら調査に関する計画は検討されたか否か伺う。
★ 答弁・木村復興政策室長・・・帰島されていない住民は新たな居住地での行政サービスを受けている。今後帰島される場合、期間内であれば引越し等に係る支援が受けられる。また、希望者には「広報みやけ」を送付している。生活実態調査実施について検討した結果、個人情報保護の事情から地方公共団体である村が実施するのは困難な状況にある。村営住宅の入居情報等の具体的のことについては所轄課が適切に対応していると思う。人的支援については現在のところ考えていない。
2)関連団体との連携・情報交換。未帰島者(在京者)を中心に物心両面から支え合う唯一の組織「三宅島ふるさと再生ネットワーク」がある。
避難生活中は「三宅島島民連絡会」の名で住民を支えた。この会議には三宅村も職員も派遣し、情報交換を密にしていた。
この会は、避難中散り々になった島民のふれあいの場として「島民ふれあい集会」を開催し、毎回千名近くの島民が集まり、心を通わせ、互いに励まし合い、生活再建に向けて多くの支援と課題をまとめて関係機関に要望活動をしてきた。平成10年に制定された「被災者生活再建支援法」の改定時(15年)には16万人の署名を集めて、避難中の支援金の継続支給及び帰島後の生活再建支援金の支給などを関係機関に請願し、改定内容の充実に大いに貢献したと思う。
そして今、組織を再編し未帰島者の心を結び合い・励まし合う機会をつくっている。会の運営費は全て寄付金で賄っているが、会員も避難中の身だ。財政基盤は脆弱だと思う。
結成丸一年。都内70世帯を260回訪問し、励ましているという。
主な活動は、関係情報の提供、住所、電話帳づくりや訪問者会議など広範だ。村は、これら前三宅村民を支える活動推進のため、財政支援(活動費)と人的支援(会議などへの出席)を行い、情報提供・交換をしたらどうか。
12月8日午後6時の東京MIX・TVとNHKもニュースで、三宅村の対応について、高濃度地区の住民が「村は、われわれを見捨てたのでは・・・」と記者会見の場で悲痛な面持ちで語り、「支援制度の期限延長」などを訴えていた姿を全国の視聴者はどう感じられたか。
この方々に「感謝の言葉が言える島宣言」が届き、未帰島者から感謝の手紙が、毎日三宅村に届くよう期待する。村長の決意を伺います。
★答弁・平野村長・・・先日のテレビを見ていて、残っている方も大変だなと思いました。この団体のアンケートを見るとご要望はいろいろあるが現居住地の行政支援の方が手厚いはずなので、そちらでやって頂くのがスジだと考えている。ネットワーク事業についてはボランティア活動の中でやっていることであり、三宅村としての支援は考えていない。
4.三宅島測候所の現体制(有人観測・監視等)の維持・継続要望について
1)現体制維持・継続の要望。情報によれば政府は本年6月末「国の行政機関の定員の純減について閣議決定し、全国46ヶ所の測候所が原則廃止されるとのことです。
気象庁は機能向上した機器で各種観測を継続し、情報提供については、サービスを低下させない配慮をしつつ ①自動観測システム導入で無人化にする。 ②無人化が困難な火山監視などの業務は近隣の気象台などに要員を集約して業務を継続するという。
三宅島、大島、八丈島測候所もその対象になると思われる。
三宅島は今なお火山ガスの噴出が続き、島内2ヶ所は居住環境値に達せず、避難生活を強いられている。
噴火発生から今日まで、機会ある度に関係者・所員の体感を通じて、ナマの言葉で状況説明を聞き、質問しては悲観したり、安堵したり、火山やガスと付き合いながら生きているのです。それが何よりの「安心策であり、心の拠り所であり、安全対策」でもあります。
いま地球上に火山は約800あるそうです。その中の108個が日本にあり、地域住民にもっとも被害を与え、刻々と変化する火山ガス量に悩まされている「三宅島火山」の観測、監視体制には計測器の数値、画像等の解析と合わせ、生きた人の眼、耳、口、手、足のフル動員がどんなに大事か。住民はこの五感に頼ってガスと共生している。
この際、村は三宅島測候所の「有人体制」の維持・継続を要望すべきと考えるかどうか、伺います。
★答弁・平野村長・・・6月30日の閣議決定で46ヶ所測候所が原則廃止されることになっている。12月20日に、議会(議長)と一緒に、三宅島測候所の存続に関する要望書を気象庁長官に提出する予定です。
5.再質問
・支援団体への援助だが、確かに法律上は「三宅の住民」ではない
だから、遠慮しているが、本音は帰りたいんだと思う。
この団体は実に細やかに、大事な事業をやっている。村が、他の自治体市民だから(調査などは)できないということであれば、当該団体と財政問題も含めてどの部分なら負担できるか。職員を派遣して協議するくらいの度量を持って欲しい。
再度申し上げるが、12月8日のテレビで「三宅村は我々を見捨てた」と言わせるのはナントも情けない。他自治体の住民について実態調査するのは抵抗感があるのはよく分かる。だが、対象者は【前三宅村民】だ。
その方々を支援している団体だ。事業計画書、予・決算書の提出を求めるなどの必要な手続きや条件を付して、援助するよう再検討を望む。
★答弁・・・2)と同じ。
・民間借り上げ家賃補助だが、村営住宅の家賃の減免の終了(18年3月)と共に終わったのではないか。また、この制度の利用者が少ないとのことだがもっとP・Rしたらいい。
★答弁・替地村民課長・・・居住関係費に2通りあり、その1つがこれに当たります。一般住宅借用者で月額2万以上で総額50万円を限度として、19年1月末まで適用されます。島外者でも適用されるが、残る(帰島できない)理由など、条件が厳しいです。
―以上―