NHKラジオ第1「ラジオあさいちばん」
2006/12/01
ラジオ出演とその内容
「三宅島・帰れない島民生活」
2006年12月1日・大妻女子大学教授干川剛史さんが非帰島島民アンケートの内容を紹介、出演しました。
小野 時刻は7時20分になりました。「ラジオあさいちばん」小野卓司と……。
佐治 佐治真規子がお伝えしています。
小野 ではこの後はニュースアップです。噴火災害による三宅島の全島避難が解除されてから1年10カ月がたちます。三宅島では観光や農業が再開されている一方で、依然火山ガスがとまらず、島の45%は立ち入りが制限されています。また、これまでに島民のおよそ3分の2が島に戻りましたが、今なお、健康面の不安などから900人ほどが島に戻れない状態です。
こうした中、三宅島の島民を支援している三宅島ふるさと再生ネットワークでは島に戻れない人たちの生活状況について160世帯にアンケートを行い、その結果がまとまりました。島に戻れない人たちの現状とその支援のあり方について、けさはアンケートを集計した大妻女子大学教授の干川剛史さんに伺います。
干川さんおはようございます。
干川 おはようございます。
小野 三宅島に戻れない人たちは、噴火から数えますと6年にわたって島に戻れない状態が続いているわけですけれども、被災者の皆さんは、今、どのような状況におかれているのでしょうか。
干川 三宅に戻れない人たちを支援している三宅島ふるさと再生ネットワークというものがあるのですけれども、それが把握している範囲では、ことしの11月現在で約220世帯が東京都内や栃木県を除く関東各県と静岡、山梨、青森、福島県内にばらばらに居住しています。三宅島が定めた帰島期間というのは去年の7月末で終わったのですけれども、その際に都営住宅等に入居していた人たちの家賃の免除が終了してしまったものですから、それまで住んでいたところから移転を余儀なくされてしまったという事情があります。
ふるさとネットは訪問活動をやっておりまして、今まで、だから去年の7月からことしの11月まで、東京都内の三宅に帰れない人たちの世帯、70世帯を延べ260回訪問活動を行っていて、今も行っているんですけれども。その中から聞こえる声とすれば、火山ガスの高濃度地区に住居があるために帰れないとか、病気のために帰れない、ガスがとまればいつかは帰りたいなといった声が聞かれるということであります。
これからの三宅の島に帰れない人たちに対する支援についてなんですけれども、これは避難指示が解除されて2年以内に帰島する世帯、去年の2月1日に避難指示が解除されたわけですけれども、これは被災者生活再建支援法に基づいて三宅村の特例措置で、上限70万円の引っ越し費用が年収に応じて支給されるわけなんです。ですけれども、今、三宅島外に住んでいる人たちについては、これは支給をされていないわけです。
小野 引っ越し費用が。
干川 そうなんですね。それで、またこれが、来年の2月1日以降になってしまうと、それ以降転居をしようと思っている世帯については、引っ越し費用はもう期限が切れてしまいますので、支給をされないことになってしまいます。
それとそのほかに、いろいろ住宅の修繕とか、生活資金の貸し付け等にかかわる幾つかの支援制度があるのですけれども、これも来年の2月末とか3月末に申請期限が来てしまいますものですから、その機を逃してしまうと全く支援が受けられないという状況になってしまうということであります。
小野 今回、三宅島ふるさと再生ネットワークでは島に戻れない人たちの生活状況を調査したわけですけれども、このアンケートを行われた理由は、どんなところからなんでしょうか。
干川 これは、帰島できない三宅の人たちの実情を広く世に知ってもらうことと、またその状況を改善することが目的であります。
小野 小野 そのアンケートの結果ですが、調査結果からどのような様子が浮かび上がってきたのでしょうか。
干川 まず、これはことしの9月から10月にかけて160票の調査票を配付したのですが、回収できたのが50世帯分で、大体31%の回収率ということになっております。それで、その回答者のうちの7割が高齢者の方、それと3分の2が無職の人。
それとあと、世帯の収入源は年金と預貯金の取り崩し、これは大半の人が高齢者だという事情があります。中には、本当に預貯金だけで暮らしている世帯というのもあります。あと暮らし向きについて、1年前と比べてどうなったかを尋ねたのですけれども、1年前に比べて苦しくなった世帯が大体6割くらい。よくなったという世帯はもちろんありません。
今度の生計なんですけれども、苦しくなるという世帯が半分、当然楽になるという世帯はありません。小さいお子さんや中高生のいる世帯だと、借金の返済と子供の教育の二重負担で生活が苦しくて、どうしても父親のほうが島で働かなければいけないので、場合によっては籍を別にして、三宅と都内で別々に暮らしているといった世帯も結構あります。
小野 戻りたくても戻れない島の人たちに対して、どうでしょうか、今後どのような支援が必要で、そして三宅島の復興を支えるためにどんなことが求められるとお考えでしょうか。
干川 まず、6割の世帯がいずれは帰島したいと答えているのです。帰島できない理由は健康問題、島内の医療・福祉が貧弱である、火山ガスの問題、子供の教育の問題というのがあります。
行政の要望とすれば、半分以上で上がってきているのが、空路の再開と三宅島への渡航費用の補助。これは理由とすれば、三宅島の高齢者の大半の人は持病を持っていまして、その治療を島の医療施設で十分に行うことができないので、そこで治療のために最低月1回、東京都内のかかりつけの病院とか医院に通わなければならないわけなんです。片道船で6時間かかりますし、特に今の時期は天気が悪いと船が出ないということで、船はものすごく天候に左右されてしまいますので、そうすると毎月船で通うのは非常に苦痛であり、また出費が大きいということです。
結局、快適に、出費も少なく三宅島から都内に治療に通えるように、空路の再開と渡航費用の補助、これを強く行政に望んでいるんだろうと思われます。
小野 これは病気を持っていらっしゃる方にとっては切実な問題ですね。
干川 そうですね。ですからこの辺のところがクリアできれば、島に戻っても生活ができるわけなんですけれどもね。もう三宅が噴火してから6年半たっていまして、避難指示が解除してから1年10カ月たつんですけれども、それでもまだ三宅島の災害が続いているということ、またそのために千人近い人たちがまだ島に帰っていないことを忘れないでほしいということがあります。
あともう1つ、三宅島ふるさと再生ネットワークはホームページを持っておりますので、随時新しい情報を出しておりますので、それで三宅のことを知っていただきたい、それがお願いであります。
小野 どうもありがとうございました。
干川 こちらこそ。
小野 ニュースアップは大妻女子大学教授の干川剛史さんに伺いました。
――了――